「預けた敷金が返ってこないかも!?」「過大にリフォーム費用を請求された!」知らないと損する退去精算の新ルールについて
いよいよ新居にお引越し!ホッと一息ついたのも束の間。
以前住んでいた住まいの大家さんや管理会社さんから怖い請求が来た経験がある方、いませんか?
今回はそんな敷金返金トラブルのお話です。
東京では一足早く2005年から適用されていた原状回復ルール「賃貸住宅紛争防止条例」。
全国的には2020年から施行され、仙台も賃貸住宅の退去精算は明朗会計・・・となるはずでしたが
・・・とても残念なことですが、敷金トラブルをよく耳にするようになりました!
自衛のためにも契約の時にきちんと理解して退去精算にそなえましょう。
これだけは覚えて!賃貸の敷金精算『新3大原則』
- 壁紙の日焼けや家具の置き跡などの自然損耗やお部屋の使用上仕方のない修繕は請求されなくなった。
- ふすまや壁紙などの張り替えに耐用年数が設定され、入居年数によって張り替え費用が減額される計算方法になった。
- 畳の張り替え費用など、次回募集に必要なリフォームは請求されなくなった。
「実録」何もしなければ80万円の恐ろしすぎる請求。
ここからは数年前に実際にあった出来事です。個人を特定できないようになんとなくボカします。
10年前にご夫婦で全国ネットの大手不動産会社が管理する60㎡、3LDKのマンションを借りたA子さん。
ご主人に先立たれ、この度お住まいになったマンションを退去することになりました。
私はA子さんの次にお住まいになるアパートを仲介した立場です。
入居時にはA子さんのご主人は大家さんに敷金として20万円を預けていました。
A子さんが次のアパートに入居してホッと一息ついたのも束の間、以前の管理会社から請求書が届きます。
請求金額はなんと、80万円!
驚きの80万円、その内訳は
- タバコも吸わないご家族だったのに、壁紙の全部張り替え(約180平米分)で約40万円
- エアコンクリーニング2台分 5万円
- その他床の張り替え15万円
- 室内クリーニング費用10万円
- 当月の賃料10万円
ところが敷金を20万円も納めていたので安心していたA子さんには、支払いの余裕はまったくありませんでした。
請求に驚いた途端、以前の管理会社から鬼のような督促。
その後A子さんは管理会社の社員から毎日ストーカーのように請求を求められ、SMSには恫喝のようなメールが毎日届きます。
アパートの敷地内にも侵入し、日中ずっとインターフォンを鳴らし続けたそうです。
精神的にも疲れ果て、困って私に相談をしてくださいました。
金額も大きかったため、私とA子さんは「敷金返還 弁護士 仙台」とインターネットで検索し、信頼できそうな弁護士の先生を予約して、一緒に相談に行きました。
私がまとめた問題点をもって弁護士事務所に。
私が感じた紛争防止条例に反するだろう問題点はこんな感じでした。
- 壁紙の耐用年数が勘案されていない。壁紙張り替え費用の満額請求は過大である。
- 確かにお線香を焚いたので多少の臭い残りがあるが、全室張り替え請求は過大である。
- 請求については旧民法が適用されているため新法に引き直して精算するべきである。
- 床も使用上仕方がないものなので請求すべきではない。
- 異常な督促を改めさせてほしい。
弁護士の先生は新法への引き直しが可能かどうかはわからないが、と前置きして、その不動産会社に弁護士名で請求額の引き下げ求める文書を送ってくださることになりました。
弁護士先生が相手方に送ってくださった内容証明
- 壁紙の経年劣化を勘案して壁紙の張り替え費用を求めないこと。
- 床の張り替え費用も支払う必要がないものであること。
- 異常な督促を止めさせること。
ざっくりいうとこんな感じでした。
先生からの文書が相手型の法人に届くとすぐに、A子さんへの請求は止まりました。
それとほぼ同時に、先生宛に相手方の法人の別な担当者から、A子さんとは敷金の20万円で精算することで示談にしたいとの連絡があったのです。
80万円の請求は未納家賃を含め、20万円まで引き下げられました。
結果はこうでした。
- 壁紙の耐用年数(6年)を勘案し壁紙の張り替え費用は0円
- 床の張り替えは家具の置き跡によるもので費用は請求するものではない。0円
- クリーニング費用はエアコンクリーニングも含めて10万円
- 最後の未払いの家賃10万円は敷金から差し引く。
参考までに、今回相談の時に弁護士先生に見せた書類はこんな感じでした。
- 相手からの請求内容(リフォーム見積もり)
- 賃貸借契約書
あとは現場の写真や大家さんからの敷金の預かり証もあれば良かったかもしれません。(今回は割と手ぶらで行った感じでした)
気になる弁護士費用は?
今回の相談料はA子さんの収入が一定基準以下であったため「法テラス対応」にしてもらい、相談料は無料でした。
法テラスは自分で選んだ先生にも適用してもらうことができる場合があります。
文書作成料金としてA子さんは先生にその場で2万円を支払いました。お願いした先生によって金額は変わると思います。
他にもあります「敷金返還トラブル対策」
預けた敷金を返して欲しい時は『少額訴訟』
弁護士費用が払えるか心配で、敷金の返金をしてもらいたい方は「少額訴訟」という手続きもあります。
60万円までの返還請求でしたら6000円で裁判を起こすことができます。
裁判はたった1度で完結します。
敷金返金には判例もたくさんあり、請求金額のおおよそ7割の金額が返金されているようです。
少額訴訟については裁判所が用意してくれている敷金トラブル用の書式に必要事項を記入するだけです。
弁護士先生にお願いする必要もありません。
とっても簡単ですよ!
過剰に請求された場合は『ADR(調停センター)』
大きな金額を請求されてしまい、その内容に不合理な点がある場合にはADRという手段があります。
弁護士・司法書士・行政書士さんのなかでも専門性のある先生がそれぞれの言い分をきき、『支払い金額の調整』などを間に入って仲裁してくれます。
私もADRは当事者として参加したことがありますが、メリット・デメリットあるなと感じました。
ADRのメリット
- 専門性のある先生に仲裁してもらえる
- 費用はトータルで5万円程度で裁判より安い
- 多くても3回までで決まる
- 裁判とは違いお互い嫌な顔を合わせなくて済む
ADRのデメリット
- 少額訴訟よりは手数料が高い
- 結局お互いに納得できず、合意にいたらないこともある→結局裁判になることもある。
- 相手が調停に応じてくれないと初めから不成立になってしまう。→振り出しに戻る
まとめ
今回は生活保護とは少し関係ないお話になりしたが、実はこのところ立て続けに同じような相談があり、私の経験を書いてみました。
都内で10年不動産業に従事していた私としては、紛争防止条例はとても慣れ親しんだ制度ですが、
地方ではまだまだアップデートされていない不動産会社が多いのも事実です。
私もお客さんと一緒に弁護士の先生のところにお伺いしたのは1度や2度ではありません。。
転換期ということでトラブルはまだまだ続きそうですが、過大な請求には泣き寝入りせず落ち着いて対応しましょう!