令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化。賃貸仲介業者はどう変わる?
今回は4月から施行される障害者差別解消法について、不動産仲介・管理会社の観点から考えてみたいと思います。
求められる不動産業者の合理的配慮とは?
合理的配慮の内容については、具体的にデータベース化されています。まずは障害のある方のどうすれば良いか、という意見やニーズをきちんと把握することが肝心です。
ここで不動産業者が間違いやすいことは必要な範囲で障害の程度や内容を確認することは差別には当たらないということです。「気をつかって詳しく聞かない」ということは対応としてはかえって不十分でしょう。
個々の困りごとをきちんとヒアリングした上で、適切な支援を行うことが求められています。
合理的配慮の提供の具体例
宅建協会の方からも「すべての不動産業者が積極的に行うべき行為の具体例」として通達が行われています。
こういったことを不動産業者の負担が過剰にならない程度に行うべきとされています。
置き去りにされがちな精神障害者
ところが精神障害・発達障害・知的障害などある人に対してはどうだったでしょうか?
宅建協会でも以前よりこのような差別的扱いの具体的な禁止例を提示しています。
宅建業者が、賃貸物件への入居を希望する障害者に対して、障害[身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む)その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む)]があることを理由に、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉等、必要な調整を行うことなく仲介を断る。
他にも色々ありますが、このように具体的例を提示しつつ差別的行為を禁じているのにもかかわらず、やはり多くのお部屋を探しているお客様が障害を理由に断られているとこが多いことから、いままでの不動産業者の対応は不十分であったと個人的には強く感じています。
精神障害や発達障害などの『見えない障害』については今まで不動産仲介の現場では非常に厳しい状況が続いていました。
仙台市内においても精神疾患のある方は初めから断っているという不動産管理会社も少なくはなく、残念ですが対応は非常に遅れていると言わざるを得ません。
個々の特性に合わせた配慮が求められます
今まででもライラック不動産には不眠がある、小さな音が気になりやすい。道路からの視線が気になる。人の視線が気になってしまい日中出歩くのが辛い。病気や知的障害のため支払いを行うのが難しい・・・・など色々な特性による相談が多く寄せられています。
限られた予算の中で全ての条件を満たすお部屋をお探しすることは、なかなか簡単なことではありません。
なるべく音の気になりにくい構造の建物を紹介する。案内時に室内の音の反響を確認するなどの対応が可能かもしれません。また、夜間にしか出歩くことが難しい方にはコンビニエンスストアや深夜帯も営業しているスーパーが近くにある物件をご紹介する。支払いについては賃料の代理納付や金銭管理のサービスを利用するなど、個々の障害の特性や悩みを把握しながらより生活しやすい物件のご紹介を行く必要があります。
入居までにシームレスな「支援」を味方につけ、お互いに共生し合える関係を築く
確かに、ものごとの捉え方、感じ方の違いや、体調の好不調に左右されがちな精神障害のある方についてトラブルがあるということは否定できません。筆者は障害のある方については「適切な支援を受けているかどうか」がトラブルを未然に防ぐ、またはトラブルを大きく育てないための分かれ道となっているのではないかと考えています。
支援については家族がいる方もいますが、障害を抱える当事者によっては家族との関係に悩む人やその家族も多く、公的な補助の役割が大きくなっています。
具体的には相談支援事業所などによる「地域定着支援」「自立生活援助」だったり、「生活訓練」・「就労移行支援施設」などによる通所などでの支援が挙げられます。これらの多くは障害のある方なら無償で受けることができる公的なサービスで、半年や1年〜といった期間、自立した生活を行うための手助けをしてくれるものです。
身近にご家族がいても利用できます。どこに相談したらいいかわからない場合には、まずはお住まいの自治体の「障害高齢課」のような部門に相談しましょう。
ライラック不動産ではこのような支援は利用が可能な範囲で、入居と前後して積極的にに利用するよう紹介することが必要であると考え、各種施設との連携をすすめています。
身近な存在として困りごとを相談できる先が複数あるとストレスも溜まりにくくなるかも。地域の相談支援事業所はとてもありがたい存在です。例えば、目の見えない方には白杖が必要なように、精神面で障害のある人にとっては水先案内人のような存在が必要なこともあるのでしょうか。